日 時:平成29年2月13日(月)〜同年2月15日(水)
視察地:大分、福岡、佐賀
視察1 新たな県内屋内スポーツ施設(武道館)建設について
対応者:大分県教育庁屋内スポーツ施設建設推進室 山上室長
1 概要説明
(1)建設に至った経緯
・大分県は県立の武道館をもっていない全国でも数少ない県であった(九州では大分県と佐賀県のみ)
・かねてから自民党県議を中心に武道館建設の要請があった(平成4年から)
・平成25年には武道関連団体を中心に署名活動が行われ26万人を超える署名が集まった。
→武道館を含む県立の県内スポーツ施設の在り方について検討する方針が決まる。
(2)建設に向けた具体的な取り組み
・庁内プロジェクトチームにおいて検討
平成26年1月〜11月関係5部局(総務、企画振興、福祉保健、土木、教育)
・外部有識者会議
平成26年12月〜27年5月(施設の必要性、求められる機能、建設場所、整備スケジュールや手法)
・条例で調査審議を付託された審議会
平成27年6月〜9月
・庁内関係部局調整会議
平成27年7月〜8月(2か月)
ラグビーワールドカップ2019の開催、大分市におけるアリーナ建設構想などとの調整もあり、この段階において当初想定していた経費・規模が増額される(50億→65億)
※なお最終的には熊本地震などの影響により72億程度まで膨れる
(3)施設概要、スケジュール
別紙の資料のとおり
備考:日田の県産材をふんだんに使った構造に詳細設計で変更
将来的なコスト(鉄骨の場合にはかかる)も考慮すれば、ほぼ鉄骨の場合と変わらないコストで作ることができるとの結論になった。
またホールなどに大分の竹を使った細工を活用するなど大分県の特産のアピールにも考慮した。

2 整備基本方針
(1)考慮したこと
・2020年東京オリンピックの合宿誘致の条件に適合するかを考慮し検討を行った。
・九州大会以上の大きな大会について12%しか誘致できていない。
・県有地の中から場所を決定(2002年日韓ワールドカップ時にドーム型のサッカー場を建設したが、この時点においてすでに横に屋内型のスポーツ施設を建設する構想があった)
・貴賓室の設置においては行幸啓の基準にあうものとした。
(2)基本理念
・武道はじめとする屋内スポーツの拠点
・誰もが気軽に利用できる施設(トレーニングルーム)
・トップの公式戦 各国代表の合宿によるスポーツ観光の拠点
・広域防災拠点(緊急防災減災対策事業債の活用に道)
(3)今後の課題
・公共交通環境が皆無の場所であり、バス路線(不採算)の引き込みが課題
・駐車計画
新たな造成は行わない方針。新たに緑を削らない。
大分トリニータの試合では8000人が来る。
駐車場は近隣に大きなものがあるが徒歩25分かかる。交通混雑解消が課題
3 質疑応答
Q 弓道場や相撲場は作らないのか?
A 県立総合体育館に弓道場はあり、老朽化していない。ただし弓道団体からは批判もある。今後の課題。
相撲については、双葉山の出身の宇佐市にあり、全国大会開ける相撲場がある。しかし練習施設を作ってほしいとの声はあるが、今後の検討課題。
Q メンテナンスや維持管理はどのようなことに工夫したのか?
A 自然採光などを活用した。太陽光などはコスト的(65億)という制限の中では難しかった。
Q 財源的には防災を入れることでよいことはあったのか?
A 県民に対し防災でも活用できるという概念は重要であった。財源的にも緊急防災減災事業債を活用でき、100%充当70%交付税の起債を使うことを想定している。
公園の中にあるので公園整備の補助メニュを使うことができる
(なお、これは当初の公園整備計画において今の場所に屋内スポーツ施設を建設することを考慮した計画となっていたためできた)
Q 多目的ホールは文化的に使うことも想定していたのか?
A 別に禁止することはないが、音響や客席を含めそうしたことを行う想定にはしていない。どうしても行うということであれば、そうした設備を主催者側のほうで準備してもらうしかない。
Q 当初はどういう計画だったのか?
A 当初の想定は、2000人規模の観客を想定した武道館。ここに大分市のアリーナ構想も出てきたため計画に修正を加えた。当初14000u→16000u
バスケの公認は5000人であり、最終的に5000人規模となった。
Q 公共交通はどうなのか?
A 大きな課題となっている。現状ではない。
Q 大分市に財源の負担はあるのか?
A 補助金部分を除くを四分の一を大分市が負担することになっている。
Q 庁内で検討している中でセクショナリズムの壁という話があったが?
A どこが所管するのかという部分で問題があった。
また当初の公園の整備計画に入っていなかったこと(駐車場の整備など)について厳しいことを言われ苦慮している。
Q 公園の補助金も一部使ったということだが、当初の公園整備計画から体育施設の整備計画はあったのか?
A あった。
Q キャンプ誘致に対して何か具体的に動いているのか?
A 基本的には大分市で使っている。基本的にはラグビーワールドカップを最優先に考えている。
Q 反対意見はなかったのか?
A 自民党は大賛成だった。一部野党でハコものに戻るのかという批判もあった。行革行革で頑張った。
Q 県と市が連携して作ったということだが、県立体育館を大分市に2つ作るということになるが。
A 平成32年に県立体育館を大分市に移管することで決まっている。
4 まとめ
本県においては、県営の富山・高岡の両武道館が老朽化しているという課題もあり、一方では富山県経済文化長期ビジョンにおいても、県立の全天候型屋内スポーツアリーナの建設に検討することが示されている。
施設整備にあたっての考え方や行革的な整理を含めて、参考となる情報収集ができた。
視察2 大分大学 東九州メディカルバレー構想推進事業
対応者:大橋副学長、守山医学部長、安倍研究・社会連携部長、穴井臨床医医工学センター教授
大分県から宮崎県に広がる東九州地区において、血液や血管に関する医療を中心に産学官が連携を深め、医療機器産業の集積と医療分野でアジアに貢献する地域を目指す。具体的には(1)研究開発の拠点づくり (2)医療技術人材育成の拠点づくり (3)血液・血管に関する医療拠点づくり (4)医療機器産業の拠点づくりの4つで、大学の医学部と工学部が連携体制を取り産学連携・医工連携の強化を図っている。
構想の背景には、当該地域に旭化成メディカル(株)などのディスポ製造企業の立地が多く、世界市場を視野に入れた製品開発や研究が大きな課題となっていることがあげられる。
医療機器開発の大分大学内における支援体制は非常に強力であり、臨床医工学センターを中心に附属病院や総合臨床研究センターが大分県と連携して、基礎研究から実験、製造承認など多方面からの支援をしている。

このような支援体制の中で、厚生労働省委託事業である「国産医療機器創出促進基盤整備等事業」を平成26年度から30年度までの事業期間で大分大学が受けた。これは、企業の研究者に臨床現場を開くことを目的に行われるもので、企業研究者の臨床現場への受け入れや医療倫理、医療ビジネス教育、医療ニーズの情報収集などを大学、病院、企業が連携して行うものである。具体的には医療ビジネス研修会、医療ニーズ探索交流会、個別医療現場実習、異業種交流会、情報交換のセミナー、などに取り組んでいる。
また、アジアに貢献する拠点づくりの一環として、ベトナム、タイ、インド、などへのプロモーションやニーズ調査、有識者招聘事業、研修生受け入れなど大分大学の海外展開活動も盛んにおこなわれている。今後はJICA事業でタイの病院建設支援、JETRO事業でタイ、マレーシア、ベトナム、ミャンマーの民間病院における先進医療導入と日本型透析医療導入支援などを行うこととしている。

視察3 八丁原地熱発電所
対応者:九州電力八丁原発電所 西田所長、川副副所長
1 発電所について
(1)概要
下部写真資料のとおり
(2)特徴
・八丁原地熱発電所は日本最大の地熱発電所。
→全国の全地熱発電量(52万Kw)のうち八丁原(11万2千)で約20%を占める
・年間4万人が見学に来るなど観光面でも貢献
・国立公園内に立地していることから、施設を低いところに設置したり、建物の色を目立たなくするなど景観面で工夫をしている。
・地熱貯留層の熱エネルギーの大きさとそれを覆い熱に蓋をする役割を持つキャップロック(粘土層)と呼ばれる層が重要であり、そのポイント選びも重要であり、長年の知見を活かしながら、どこに井戸を掘るかというノウハウを持つ。
・ダブルフラッシュシステムを採用。吸い上げた蒸気(約300℃)を気水分離し、蒸気でタービンを回し、一方、分離した熱水をフラッシャーと呼ばれる設備で圧力を下げることで、もう一度蒸発させ、その熱量でもう一度タービンを回し発電する。
→ このシステムを使うことで出力を20%上げている。
(3)メリット
・エネルギー源はマグマ(地球)であり、この発電所の場合、年間20万Lの石油を節約できる。
・最終的な排出物は水だけであり、環境を一切汚さない。
(4)デメリット
・火力と比較しても、エネルギー密度が小さく、効率が良いとはいえない。15年を超えて長く運転を続けることで、メリットが出てくる。
2 現場視察の様子
3 質疑応答
Q メンテナンスにおいて工夫をしているのか?
A→ 井戸を掘り、蒸気を吸い上げる際に、配管に二酸化ケイ素が固形化し付着してしまう。付着がひどくなると井戸が使えなくなる
・付着しにくくするための処置
・付着したらジェット洗浄で除去
・井戸の掘る場所により、付着の具合も異なることから、そもそも井戸の掘る場所選びも重要。
Q 国立公園内であり発電所の建設に規制があったと思うがどうであったか。
A→ 環境庁(当時)が問題視する前に(八丁原の建設は昭和52年)すでに6か所あった。いわゆる既得権であった。
以降は、新たに設備開発をする際には環境省の許可をとってやっている。
Q 井戸はどのくらい耐久するものなのか、常に新たに掘り続けなければいけないのか?
A→ 二酸化ケイ素の付着などにより、使えなくなるものが出てくるが、場所によって異なる。何十年も現役の井戸もある。地下のことを100%理解するのは難しいが、掘るポイントは重要であり、本発電所ではそのノウハウを積み上げているところ。
Q 一本掘るのにどのくらいのコストがかかるのか?
A→ 場所によって異なる。地盤の質の問題もあるし、そもそも重機を入れるための周辺の道路環境整備から必要になる場所もある。
Q 井戸を掘るポイント選びは重要と考えるがどうか?
A→ 高いエネルギーをいかに地熱貯留層から安定して得るのか?特に、地熱は長く稼働することでメリットが出るため、長期間安定してという部分は重要。
二酸化ケイ素がつきにくい場所選びなどのノウハウも重要になってくる。
(余談)九州電力では西日本技術開発という子会社を持っているが、ここで井戸掘りのポイント選びなどについてのノウハウを積み上げている。富山県で新たに地熱発電を始める際には、相談に応じる。
Q マグマが地下にあり、危機管理の問題があるがどうか?
A→ 近くに活火山もあり、かつては噴火したこともあった。しかし、これまでにトラブルが起きたことはない。強いて言えば、火山灰により、機材が詰まり影響が出ることを懸念している。
4 まとめ
本県でも、企業局において地熱発電所の建設に向けて検討を進めており、地熱発電所を建設にするにあたって、想像以上に多くの課題があり、また建設場所については、綿密な調査、また運営においても多くの知見を要することがわかった。
部会としても、こうした調査の結果を踏まえ、当局に対し課題を質していくこととしたい。
視察4 博多港国際ターミナル
対応者:博多港国際ターミナル管理事務所 吉村様
博多中央ふ頭クルーズセンターを視察。
平成27年の外航クルーズは、前年の99回の2.5倍、245回の寄港数を数え、内航クルーズを含めると259回と横浜を抜いて日本一になった。その後、28年は328回、29年の予約は371回(2月15日現在)と順調に実績を伸ばしている。
福岡市経済観光文化局の調査によれば、外交クルーズ船の中国人旅行客の一人当たりの福岡での平均消費額は107,000円。購入品目1位は「化粧品」、2位「健康食品」、3位「お菓子」、4位「医薬品」、5位「電化製品」の順になっている。年齢は女性61%、男性39%と女性客の優位が目立つ。
現地見学をした中央ふ頭クルーズセンターは、待合棟700平方メートル、CIQ棟1,000平方メートル最大20か所の審査ブースがある。当日は3,000人クラスのサファイヤ・プリンセスが寄港していたが、このクルーズセンターで3千人の審査をするのに約3時間を要するという。
隣接地には3階建ての「博多港国際ターミナル」が設置され、待合ロビーのほか、免税店や審査場がある。当日は同じく10万トン3,000名級の外航クルーズ船が来ており、事務局は多忙を極めていた。
視察5 水素エネルギー研究について
1 水素エネルギーとは
メリット:地球温暖化 の要因であるCO2減らす。
→燃料電池自動車の開発進む(水素と酸素を反応させ電気を起こす)

2 水素ステーション
・首都圏、中京圏、関西圏、九州北部圏を中心に普及し、現在は全国に約80か所
(ステーション整備には多額のコストがかかることから、思ったほど整備が伸びていない)
・商用ステーションでは約3分で満タンとなり500Km以上走れる。
・水素ステーションには、オンサイトステーション(水素を自前で作る設備あり)、とオフサイトステーション(水素をトレーラーで運び運営する施設)がある。
・安全性に対する不安(爆発するのではないか)があるが、@漏らさない、A貯めない、B発火しないなど含め、水素のたまらない構造になっている。また地震と連動したシステムになっているほか、頑丈な障壁も設けられている。
・水素ステーションをガソリンスタンドにも併設できる制度改正もなされている。
・水素の低価格化が今後の課題。(現状は満タンにして5000円程度とのこ。500Km走ると考えれば高額とはいえないが、安価でもない。)
・いずれにしても燃料電池車は順調に今後も増えていくと見込まれる。
3 課題
・規制が非常に厳しく、一般的な基準の4倍の安全性が求められている。
(施設整備にそれだけ余計にお金がかかる事態となっている)
・水素ステーションには、一定の資格保有者を置く必要があり、人材確保も課題。
4 まとめ
本県でも民間を中心に水素ステーションの建設の動きがある。行政のかかわり方や整備の進め方などについて、今度様々な課題が生じるものと考えられる。先進地を視察し、水素エネルギーの基礎知識と、水素ステーションの仕組みなどについて知ることができ、有意義であった。
視察6 九州佐賀国際空港
対応者:佐賀県地域交流部空港課 野田信二課長
平成10年開港の佐賀空港、愛称を「九州佐賀国際空港」とした。九州の中心に近く、気象に起因する欠航率は低い。空港の周辺半径3キロ以内に民家が無く、6:30から22:00の旅客機に加え、00:30から04:30の夜間貨物機の発着が認められており、九州で2番目に運用時間が長い。
現在、ANAの東京便5往復に加え、成田(1便)、上海(1便)、ソウル(3便)のLLCが運航している。夜間貨物は羽田と一往復。
空港利用実績は開港以来、30万人前後で推移していたが、平成26年度から東京便の増便やLLCの運航により一気に55万人台、翌27年度は63万人台と急増した。搭乗率も27年度はそれぞれ過去最高を記録し、東京便が68.9%、成田便が76.1%、上海便が85.9%、ソウル便が70.7%と高成績を残している。成田便の需要は海外観光客よりは地元九州の旅行者が圧倒的に多く、片道3,520円という価格の安さから関東方面の旅行に活用されており、35%はこれまで旅行をしなかった層の利用であるという。夜間の貨物については、羽田→佐賀はヤマト運輸が買い取り、宅急便の速達性を高めることに一役買っている。帰りの佐賀→羽田は自動車部品や半導体などの電子部品の輸送が主である。
野田空港課長は「利用促進は地道な営業活動しかない」と言い、県庁副課長級職員119名による営業100人チームを組織して活発な営業活動をしている。チームメンバーには知事名による空港課の兼務辞令を発し、各課主催のイベントや会議、研修会等での空港利用をPR、それぞれの営業結果については2名の副知事に必ず報告することになっており、副知事はこれに対して100%返信する。単なる兼務辞令とは一味違う運用をしている。
その他、利用促進策として事業所のマイエアポート宣言、無料の自動車道、無料駐車場、リムジンタクシー、1000円レンタカーのほか、プライベートジェットの就航も促進している。今後は2000メートルの滑走路を2500mに延長するなど、空港機能の拡充を図り、更なる増便と利用促進を図っている。
本県の富山空港においては、新幹線との競合により羽田便が苦戦しており、空港を維持していくために、様々な工夫が求められている。
今回の九州佐賀国際空港の取り組みを視察し、本県の空港維持に向けての本気度がまだまだ足りたいということを改めて感じた。
誘客のターゲットを明確にし、そこからの誘客についての課題を整理し、その課題を着実に解決していくとともに、しっかりとした営業活動を継続する必要がある。
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