問1 イタイイタイ病と県立資料館等について
「イタイイタイ病」の被害者住民は、長い闘いを経て、昭和43年3月三井金属を相手に裁判を起こし、昭和47年8月に名古屋高裁金沢支部にてついに完全勝利を勝ち取った。被害者が大企業を相手に勝利した、日本の公害史上初めての判決であった。
当時イタイイタイ病対策協議会の会長であり原告団代表であった、故小松義久氏は当時を振り返った寄稿の中で、「負けたらここに居れなくなる、まさに先祖伝来の田畑と戸籍をかけた闘いであった」と、裁判についての心境を記しておられる。
また、故人は、長い苦難に満ちた住民の闘いを、決して忘れてはならない「マイナスの遺産」と称し、神通川流域に二度と再び公害が発生することが無いよう活動を続け、さらにそうした経験と技術を発展途上国での公害防止対策や、地球環境問題を後世に活かす「プラスの遺産」になるよう引き継いでゆくことが必要であり、そのために「イタイイタイ病の語り部」の育成や「イタイイタイ病やカドミウム問題」をテーマにした総合センター設立の必要性を訴えておられた。今回の「県立イタイイタイ病資料館」のオープンは、まさに故小松義久氏の悲願であり、今まで亡くなられた、そして今もご存命のイタイイタイ病患者の皆さん、ご家族や地域の皆さん、現イタイイタイ病対策協議会の高木会長をはじめ、いままで関わってこられた多くの方々の悲願であった。
(1)イタイイタイ病発生から今日に至るまで、関係各位の長い闘いの歴史が あった。今度はその経験と歴史・教訓を、未来を担う子どもたちや全人類に発信してゆかなければならない使命がある。イタイイタイ病の貴重な資料や教訓を後世に継承するため「富山県立イタイイタイ病資料館」がオープンするが、発生から今日までの長い歴史を振り返り、開館に込めた思いを、問う。
(知事答弁)
県は、健康調査や保健指導、患者認定等、これまで流域住民の健康を守るための取り組みを行ってきた。被害者団体や原因企業による発生源対策、県による汚染農地対策により、神通川は清流を取り戻し、30年をかけた汚染土壌の復元も本年3月に完工するなど、関係者や地元住民による困難を克服してきた長い歴史があった。
しかし長い月日とともに、関係者の高齢化や歴史の風化の恐れがあるため、県としてイタイイタイ病に関する貴重な資料や教訓を後世に継承するために「富山県立イタイイタイ病資料館」を設置し、来る4月29日に会館をむかえる。
この施設はイタイイタイ病の恐ろしさを知り、克服の歴史を学び、県民一人ひとりが環境とライフスタイルの確立や地域づくりに取り組むことを目指す、未来志向型の資料館にしたいと考える。このようなことが二度と起こらぬよう、地元の方々の協力も得ながら、国内外に向けて情報発信してゆきたい。 (2)ふるさと教育、環境教育、命を大切にする心を育むためにも、富山県教育の教材として未来を担う子どもたちに学ばせるべき。
公害病であるイタイイタイ病を風化させないため、またふるさとを愛する心を育むため、環境教育の一環として、イタイイタイ病について小中学校の授業の教材として必修化する考えはないか、問う。
(教育長答弁)
本県では、すべての小中学校がイタイイタイ病の記載がある教科書を用いている。小学校5年生では、イタイイタイ病の発生原因、病気の症状、判決の結果などについて、中学校の公民分野の学習では、イタイイタイ病をはじめとする公害病の発生原因や公害防止の取り組み、環境保全の重要性について学んでいる。今回、イタイイタイ病の副読本を作成し、小学校5年生全員に配布するとともに、この副読本や資料館を利用しながら、いのちの大切さや自然環境の保全の大切さについて学ばせたい。
(3)水俣病資料館、新潟水俣病資料館においても語り部の果たす役割は大きく、臨場感のある、心のこもった講話を聞きに多くの団体が訪れている。
イタイイタイ病の体験を生の声で語り伝えてゆくために、被害者団体の協力を得て「語り部」制度が発足するが、語り部の育成や活動支援にどのように取り組むのか、問う。
(厚生部長答弁)
現在10名の語り部に登録いただいたが、皆さん未経験者のため、23年度に被害者団体の協力を得ながら、語り部養成事業を行ってきた。資料館の開館後、10名以上の団体に対して語り部講和を行う予定だが、今後完成した資料館での実地研修を行ってゆく。
(4)被害者団体・語り部・一般ボランティアが交流を深め情報を交換し知識や技能を高めるための専用スペース(スタッフルーム)が必要であると感じる。
資料館にはイタイイタイ病被害者団体関係者や語り部・ボランティアが情報交換や情報の蓄積、交流や研修をするためのスタッフルームを確保する方向だと聞いているが、どうなっているのか、問う。
(厚生部長答弁)
資料館では、語り部のほかに展示解説を行うボランティアにも参加していただく予定である。このため1階事務室の横に、交流室を設ける予定である。語り部やボランティアの交流や情報交換の場として、資料館スタッフとの打ち合わせスペースとしても有効利用していただきたい。
(5)資料館のハードとソフトを充実させる事は大切だが、こちらから積極的に出向いて伝える事も大切である。
資料館に来ていただくだけではなく、スタッフが学校や公民館に出向いての出前講座や、これまでイタイイタイ病対策協議会が主催し毎年1回、30年に亘って開催してきた「イタイイタイ病セミナー」のような催しを、資料館が中心になって行う予定はあるのか、問う。
(厚生部長答弁)
資料館では、広く一般県民を対象とした普及啓発活動を行う。具体的には、イタイイタイ病の知識を深めていただく「仮称県民フォーラム」や、語り部によるリレー講和を行う「仮称イタイイタイ病伝承会」、子ども向け夏休み自由研究講座などである。また、資料館の外では、復元田や神岡鉱山をめぐる「親子日帰りバスツアー」や、県内公的施設等でのパネル展示会や、語り部や資料館スタッフによる出前講座も検討している。
(6)昭和54年から第1次地区が着工し、30年を経て平成23年度に「神通川流域カドミウム汚染田復元事業」が完成した。
県が平成23年度農業農村工学会「上野賞」を受賞し、今月完工を迎える「神通川流域カドミウム汚染田復元事業」について、これまでを総括して、どのように評価しているのか、問う。
(知事答弁)
このような広範囲にわたる汚染農地の復元は、わが国では前例がなかった。これまで昭和54年の着工から平成23年の完工まで、33年の年月と407億円の事業費をかけ、客土母材の運搬方法や広範囲に点在する埋蔵文化財の調査など、様々な課題を克服しながら工事を進めてきたが、汚染米を流通させることなく今年度すべての工事が完了でき、感無量である。また、「上野賞」を受賞できたことも大変名誉なことである。これらに関する資料もわかり易くまとめ、本資料館に展示する。
ここに、一審判決文の抜粋がある。
「河川は古来 交通・かんがいはもちろん 飲料その他 生活に欠くことのできない自然の恵みのひとつであって わらわれは何の疑いも無くこの恵みにすがって生きてきた。神通川ももとよりその例外ではない」真に深い判決文であると思う。
知事、県当局のご尽力に心から感謝申し上げますとともに、われわれ責任ある大人が、この歴史を今一度しっかりとかみ締め、この資料館が「公害病根絶」「環境教育」「命の教育」における、世界に向けた発信地になることを祈り、次の質問に移る。
問2 自殺対策等について
厚生労働省によれば、日本における自殺死亡者数は、1965年(昭和40年)には14,444人(人口10万対死亡率14.7人)であったが、年々増加し平成10年に31,755人(人口10万対死亡率25.3人)と初めて3万人を超え、平成10年から12年連続で3万人を超える深刻な事態となっている。先進7カ国の中でもわが国の自殺率はもっとも高く、15歳から34歳までの若い世代の死因で、自殺がトップなのはわが国だけである。
(1)本県における自殺者の現状を問う。
(厚生部長答弁)
本県自殺者数は、国の人口動態統計によると、平成15年の356人をピークに、平成17年は338人、近年はおおむね290人台で推移している。平成22年は前年比44人減の249人と大幅に減少した。全国順位(率)も前年のワースト14位から28位に改善した。しかし、平成23年10月現在では、自殺者数が235人となり、全年同期比27人、13.0パーセント増となっている。
(2)自殺の背景として、自殺を試みた人たちの約75パーセントに精神疾患があり、その約半数がうつ病であると言われている。
本県におけるうつ病患者の現状とその支援策について、問う。
(厚生部長答弁)
本県での精神通院医療費を公費で負担しているうつ病を含めた気分障害の患者数は、平成21年6月末時点で2,317人、平成22年では2,556人、平成23年では2,720人と毎年増加している。県では、うつ病の早期発見が自殺の予防に繋がるものと考えており、平成21年に策定した自殺対策アクションプランに基づき、普及啓蒙活動やかかりつけ医と連携した自殺防止対策に取り組んできた。新年度においては、ホームページでの啓蒙活動、かかりつけ医との連携強化、精神科医や看護師を対象とした研修会の実施などに取り組む。
(3)早期発見・早期治療を促進するためには、専門医や各種専門相談機関のみならず、いろいろなところで気軽に悩み事を相談できる環境を整備する必要がある。
精神科医や精神保健福祉士、臨床心理士などの専門家への相談体制の充実だけでなく、気軽に相談できる環境づくりが必要と考えるが、問う。
(厚生部長答弁)
自殺の原因には、健康問題や経済問題、家庭問題や仕事の問題など様々なものがあり、精神科医などの専門家のみならず、身近なところで気軽に相談できる体制が必要と考える。このため県では、相談者と同じ経験を持ち悩みを分かち合える「ピアサポーター」による相談会や、NPOによる年間を通した電話相談、専門相談機関以外の多様な相談窓口の設置に取り組む。また、理美容院や飲食店などの接客業の方を「心のふれあいサポーター」として養成する。
(4)「富山県自殺対策アクションプラン」に基づく今後の対策について、基金事業終了後の対応も含め、問う。
(厚生部長答弁)
本県では、自殺対策緊急強化基金を活用し、普及啓発や相談支援体制の充実強化などに取り組んできた。新年度は、特に自殺者数が増加している高年齢者や働き盛りの世代、自殺未遂者などの高リスク者への対策に力を入れる。具体的には、身近な地域で高齢者を支援する方々に研修会を実施する、企業や経営者にメンタルヘルスの重要性に関する研修会を実施する、さらに自殺未遂者対策として、2次・3次の救急病院における未遂者への対応や関係機関との連携の強化関する研修に取り組む。
問3 再生可能エネルギー等について 本県の再生可能エネルギー利用に対する取り組みである「農業用水を利用した小水力発電」については、本県の持つ豊富な水量を生かした環境負荷の少ない自然エネルギーの活用として、今回の議会でも度々取り上げられてきた。また、新総合計画においても小水力発電が推進されることは、真に時流を得た取り組みだと感じている。
一方で本県は、全国でも有数の地熱エネルギーを有する県である。また富山湾における波力発電、潮流発電、潮汐発電、海洋温度差発電などの可能性もあるのではないか。
(1)本県における「地熱発電」と「海洋エネルギー発電」について、現状と今後の可能性について、問う。
(商工労働部長答弁)
本県における地熱発電の資源は、環境省のポテンシャル調査によると東部山岳地域を中心に豊富に存在しているとされている。しかし大部分が自然公園内の最も規制が厳しい区域内にあり、また、きわめて険しい山岳地帯にあることから、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構の調査対象となっていない。最近、民間による新たな地熱発電開発の動きも見られる。今後の規制緩和や技術開発の動向を注視したい。
海洋エネルギー発電については、現在大学や研究機関での基礎技術開発や研究段階にあり、今後の進展が期待されている。
近年、環境省のエコハウスモデル事業や、環境負荷軽減への意識の高まりから、民間ハウスメーカー等が主導しての自然エネルギーを最大限取り入れた「スマートハウス」に対する取り組みが盛んになっている。また、先般富山市が国の成長戦略プロジェクトのひとつである「環境未来都市構想」の選定を受けたように、「まちづくり」をする際に、街全体の電力の有効活用や再生可能エネルギーの利用など、都市の交通システムや住民のライフスタイルの変革まで複合的に組み合わせた社会システムである「スマートコミュニティ」の考え方が主流になっている。このような取り組みを、積極的に全県に広げるべきであると考える。
(2)本県においてスマートコミュニティを推進するためにどのように取り組むのか、問う。
(知事答弁)
スマートコミュニティーは、再生可能エネルギーの導入、省エネルギーの推進、電力需要の平準化など、地域単位でエネルギー全体を効率的に活用する次世代エネルギーシステムである。本県でも、コミュニティーの形成に必要な要素技術、本県の特性を生かしたコミュニティーのモデル、県内企業の強みを生かした技術の活用、システム開発のための実証実験の地域や規模、内容などについて検討する。これらの取り組みにより、スマートコミュニティー関連産業の振興にもつとめたい。
問4 本県教育に係る諸課題等について
仕事として保育現場に足を運んだり、PTA活動を通して小・中学校の教育現場を拝見し、先生方との意見交換の機会が度々あるが、「自閉症、アスペルガー症候群、学習生涯、注意欠陥多動性障害」などの発達障害を持つお子さんの数が増えてきている現状があると感じている。また、その対応について育児や教育の現場では、相当のエネルギーとマンパワーをつぎ込んでいる。
健診などで発達障害の疑いが認められた場合に、保護者にいち早く認識していただき、保育現場、学校現場、その他周囲の方々の理解を得ながら早めに対応すれば、改善する可能性があると聞いている。
(1)発達障害について、保護者に早い段階で専門機関への相談や、支援を受けてもらうため、保護者に対する意識啓発が必要だと考えるが、どのように取り組むのか、問う。
(厚生部長答弁)
発達障害については、円滑な社会生活の促進や心理機能の適正な発達のために、早期発見に努め、支援してゆくことが重要である。本県では、市町村と連携し実施する1歳6ヶ月健診、3歳児健診において、県で作成した発達障害児スクリーニングマニュアルを使い早期発見に努めている。しかし、子どもの成長や発達には個人差が大きく、保護者が障害とは気づかないことが多い、また発達障害と認めないなどの課題がある。このため、発達障害者支援センターでの保護者相談を実施する。また、発達障害児の育児経験者による家庭訪問、保育所等に対する保護者への接し方の助言を行う。平成24年度には、発達障害支援ハンドブックを改訂し、発達障害児の育児事例を新たに盛り込む。
(2) 小・中学校などの現場において、特別支援学級や専門的知識をもつ教員、外部からのスタディ・メイト等の支援が不足しているのではないか。
学校における特別支援教育にどのように取り組むのか、発達障害のある子どもの指導及び支援の充実について、対象児童生徒数の推移を含め、問う。
(教育長答弁)
特別支援学級は、この5年間で33パーセント増加、現在420学級設置している。このうち発達障害がある児童生徒が在籍する自閉症・情緒障害特別支援学級は、5年間で137パーセント増の145学級となっている。また、通級指導教室においても5年間で89パーセント増の100教室を開設し、必要な教員も増員している。あわせて、市町村が配置しているスタディ・メイトも今年度は前年比32名増の238名となっている。県教育委員会では、スタディ・メイトの要請研修を行い人材育成につとめている。また、教員の専門性が重要であり、基礎研修、専門研修、国立研究所への留学等により、専門性の高い教員の育成に取り組んでいる。今後とも教育環境の整備に努める。
(3)本人や保護者はもとより、発達障害者支援センター、ハローワーク、障害者職業センターなどと連携して就労を支援する必要がある。
学校における発達障害のある生徒への就労支援の現状と取組みについて、問う。
(教育長答弁)商工労働部協議
各高校では、担任と進路指導主事を中心に、近隣の特別支援学校や、発達障害者支援センター、ハローワーク等と連携し、生徒の進路希望や生徒の実情に応じて、きめ細かい対応を心がけている。また、県教委が配置する就職支援アドバイザーや就職支援教員、特別支援学校就労コーディネーターとハローワークの学卒ジョブサポーターからなる就職支援担当者会議を開催し、発達障害のある生徒に対しても、本人に適した企業や支援方法の情報を学校に提供している。
(4)軽度の知的障害のある生徒の職業的・社会的自立を目的に、旧二上工業高校と旧大沢野工業高校の校舎を改修して新設される高等特別支援学校における特徴的な教育内容や従来の特別支援学校との連携について、問う。
(教育長答弁)
高等特別支援学校では、生徒の就業的自立を目指し設置学科を職業科とし、自習を重視したカリキュラムにより実践力の育成を図る。教育内容は、挨拶や受け答え、時間や規則の厳守など職業上必要な習慣や態度を身につけること、教科の学習では、基本となる読み・書き・計算や一般教養について学び、実習では「ものづくり」「環境」「福祉」「流通」などの分野を設け、実際の職場で役立つような取り組みに努める。既設校との連携については、先進的教育やより実践的な実習成果を各校に普及し、全体の指導力を高めてゆきたい。また、関係機関や企業等の協力を得ながら、実習の受け入れや就職先を開拓していく。
本県における教育が、これからも心豊かで温かいものでありますよう、そして、子どもたちの健やかな成長を願い、質問を終了します。ありがとうございました。
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